視線

「佐倉は、これだろ」 竹田がにやにやしながら見せてきたのは、ジンギスカン味と書かれたキャラメルだった。 「さっきバクバク食ってたもんな」 「いや、ジンギスカンは美味しかったけど、キャラメルにする必要ある?てかいらないし」 修学旅行2日目の夜、…

青のグロスは誰のもの

「すみません、お先に失礼します。」カトウさんがそう言って席を立ち、みんな「はーい」「お疲れー」と返すも、誰も顔を上げていない。かくいう私も、そうした一人だ。だって、ただでさえ手が足りてないのに、その原因になってる人にまで愛想良くなんてして…

私の國

私の国では、一人称を「私」にすることを義務付けられている。みんな生まれてから死ぬまで、自分のことを「私」と呼ぶ。「僕」や「俺」はもちろん、自分の名前で呼んでもいけない。 そのことを疑問に思ったことは何度かあった。 その度に、父や母に何故なの…

君とあの子と彼女と夏フェス②

2.愛子 母親と娘って、世界で一番難しい人間関係だ。 夏はビールが良く売れる。 今日は野外のイベントだからか、特にそうだ。 客がイケメンだろうがおじさんだろうが、等しく最上級の愛想でもてなすのが、わたしのルール。 こちらが笑顔でビールをわたせば…

君とあの子と彼女と夏フェス①

1.カナ*まだ朝の9時だっていうのに、太陽はすでに、本気だ。普通にコンビニで買えば60円のアイスキャンディーが、いつもよりずっと高い値をつけられているのにすごい勢いで売れていく。最初のアーティストのライブが始まるまで、あと1時間。熱気で手…

こども

ランドセル似合わないねって、褒め言葉だ。わたしは、背の順で並ぶときはいつも一番後ろだし、顔も大人っぽいから中学生によく間違えられる。だから、電車やバスに乗るときはいつも保険証を持ち歩く。こういう困ったこともたまに起きるけど、実際大人にみら…