こども
ランドセル似合わないねって、褒め言葉だ。
わたしは、背の順で並ぶときはいつも一番後ろだし、顔も大人っぽいから中学生によく間違えられる。
だから、電車やバスに乗るときはいつも保険証を持ち歩く。
こういう困ったこともたまに起きるけど、実際大人にみられるって、気持ちいい。
社会科見学で工場に行ったとき、一人だけ大人用の白衣とマスクが渡されたときは、なんか大人と対等に扱われた気がして、嬉しかった。
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さきちゃんちにはたくさんゲームがあるから、みんなが集まる場所になることが多い。コントローラーは4機までしか使えないから、かわりばんこで遊ぶ。
ゲームの中で自分が使うキャラクターを選ぶときは、わたしはいつも最後に選ぶ。
だって、何を選んでも性能は同じなんだから、なんでもいいじゃない。
そんなわたしを見てさきちゃんママはいつも「理子は大人だね。」って言ってくれる。
でも、大人ってそういうことなのだろうかと、最近考える。
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「ねえ、理子縄回してよ。」
杏は女子のグループで1番上の人だから、誰も逆らえない。
わたしは別にそんなに嫌でもなかったし、やってあげた。
穏やかな学校生活をおくるためなら、こんなのどうってことない。
それに、どうせ私は受験で違う中学だ。もうすぐ会わなくなる相手だと思えば、大抵のことは我慢できる。
こういう考えって、大人っぽい。
あ、なんか、大人っぽいって自分で思うの、こどもっぽい。
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相澤くんは、地元のサッカー少年団に入っている男の子だった。
そういう子とわたしは普段ほとんど話すことがなかったから、体育の授業帰りに下駄箱で話しかけられて、正直すごくびっくりした。
「お前の指、長えな。」
「え、ああ、そうかな。」
「貸してみ。」
相澤くんがわたしの手をとる。
初めて男の子と手をあわせた2秒間
静電気が、こんなの大人の世界ではどうってことないよって、ちっちゃくばちっとした。
「あ、やっぱ俺のが短い。」
相澤くんは負けたーと笑って、先に教室に戻ってしまった。
あの日、他の子より大きいこの手が
今だけ熱を帯びたこの手だけが
どうしようもなくこどもだった。